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Resiinaの突き出し

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 突き出しピンの位置についてはいろいろ議論を重ねました。 結論として 「製品に突き出しピンの跡を出さない」 ことになりました。 これは金型屋からすれば「面倒な製品仕様」に分類されますが製品の意匠性を損ねないためには必要な選択だったと思います。 突き出しピンの跡を出さずに製品を押し出すにために製品のデザインを変更しました。 Resiinaモデル、ver11とver24の画像です。 Resiina_ver11 Resiina_ver24 何が違うかわかりますか? そう、色が違うんです。 いや、そうじゃない。 「R0.2」などの大きさを表記するもの時のところを見るとver24は四角い枠で囲って一段くぼみが作られています。 ここまでくると、もうお分かりですね。 文字の部分をブロックにしてその部分を突き出しているんです。 ちなみに全部の文字を突き出しているわけではなく12区画のうち6区画の文字部分を突き出しています。 金型の構造を紹介していきます。 まずは金型の1区画ずつ穴をあけておきます。 金型のベース部分 空いた穴の部分に部品(以後入れ子と表記します)を組み込んでいきます。 1区画ずつ穴をあけておくのには理由があります。 射出成形時に樹脂が流れてきた際に、行き止まりになる部分で空気の逃げ場がなくRが綺麗に作られない状況を避けるために、 部品を分割して空気を逃がすため です。 分割しなければその分、工数も減りますし金型の価格も抑えられます(金型は自社で製作なので手間だけ)が工数かけても製品形状がしっかり出せる構造を選択しています。 穴の中に組み込む入れ子をそれぞれ加工します。 この分割した入れ子の文字部分だけに突き出しピン(四角いピンは角ピンといいます、以後角ピン)が入るように加工をしています。 角ピンの先端には文字彫刻を施しています。 こうやって12区画のうち6区画に角ピンを設定し製品を突き出しています。 さて、問題です。 製品を突き出している角ピンはどこに設定されているのでしょうか。 これは製品を見ながら探すのが面白いと思います。 正解はこちら 正解は拡大してみてみてください ここまで製作時のお話を書かせてもらいました。 実はここに書いた以外にもたくさんの出来事があり今でも後処理で手がかかってしまっていたりで作るのが大変だと思う反面、とても良いものができたと感じており、

Resiina金型製作

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Resiinaの金型を製作するにあたりいくつか課題がありました ① ゲート(材料注入口)をどこに設定するか ② 肉厚部分のヒケをどのように対処するか ③ 裏側のデザインをどうするか ④ 突き出しピンをどのように設定するか Resiinaはチョコレート形状に模すため肉厚になっています。プラスチックの製品は肉厚だとヒケといって製品が凹んでしまう現象が発生します。今回使用する成形材料ABSだとおおむね2mmくらいの肉厚が丁度よく、4mmを超えるとヒケが目立ちやすくなります。そのため①~③は全て連動して検討する必要がありました。 最初に製作した金型は裏面がシボ加工サンプルになっていました。 シボ目を見てどのくらいの粗さにするかを確認できるツールがRやCのサンプルと一体になっていたら便利だと考えたからです。 裏面にシボ加工を施したResiina しかし、このデザインは断念することになりました。 最大の理由は製品のヒケです。 Resiinaは肉厚で製品の裏面にもヒケが発生していました。そのため、裏面に施したシボサンプルが平面にはならず歪んで見えてしまいまいました。数値にすれば数μmのゆがみです。しかし、人間の目は非常に繊細でほんの少しのゆがみも認識できてしまいゆがんでいないものと比べるとかなり印象が変わってしまいます。 実際に製作したシボサンプルの形状、シボの粗さが粗いほどヒケは見えづらくなりますが、浅いシボ(写真下側)はぼんやり模様が見えます。 折角のサンプルなのに、間違った情報を与えてしまうと本末転倒です。 そのあとはヘアラインのサンプル金型も製作しましたがそちらもシボサンプルと同様の理由で採用されませんでした。 裏面の金型部分へライン加工前 1区画ずつへラインの番手ごとに手加工 結果的に色々な情報を入れるよりもRやCのサンプルとして1つの情報を丁寧に作りこもうという事になり裏面にはメッセージを彫り込むことにしました。 ・シボ加工をした金型 ・へライン加工をした金型 2金型とも世に出ることはありませんでした。 余談ですが、金型は製品と逆の形状で製作します。 そのため文字は逆文字になります。うっかり正文字で金型製作するとやり直すことにもなるので念のため金型加工し終わった際に文字のバランスやキチン度彫り込まれているかの確認も含め粘土で押し当ててチェックしたりしま

捨てられないパッケージを目指して

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チョコレート型の立体サンプル製作を進めていきながら、パッケージのデザインも進めていきました。 パッケージは製品を販売するためにはとても大切ですが、パッケージが欲しくて購入するのではなくあくまでも製品を販売することを目的とするため、製品購入されたらパッケージが捨てられてしまいます。 私は商品を購入した人たちがパッケージを捨てることを想像し、何とかできないかと考えてBRANCHメンバーには「パッケージも捨てられないものを作りたい」と かなりわがままを言いました。 デザインの力で捨てられないものをつくる みんなで何度も話し合いを重ねパッケージのデザインと試作を繰り返しました。 ・色 ・グラフィック ・表示されている文字 ・フォント ・パッケージの形 日本に限らず海外のチョコレートを買ってきて分析したり、メッセージをどのように伝えるか考えたり、何度も話し合いを重ねました。 生産者の顔が分かるパッケージが良いのでは?との意見からプラスチックのペレットを手に持った写真を撮影しパッケージに反映させて様々なサンプルを作成しました。 パッケージの試作品 パッケージ内に生産者の画像を入れるも採用されず いくつものサンプルを作ってもらったもののすべて不採用に。 更に違うデザインでパッケージを試作してもらってきましたがこの画像に移っているパッケージもすべて不採用。 パッケージデザインだけで50以上は見てきました。おそらくデザイナー側で作ってはみたものの表に出していないものもあると思います。 そうやっていくつものサンプル製作を経て出来上がったのが現在のパッケージです。 パッケージの赤と白でできている部分は製品をくるむ帯です。 この帯の部分は製品購入後捨てられてしまいます。 しかし、捨てられないパッケージにするために帯の部分を封筒にしています。 封筒にすることで、製品を開封した後もこのパッケージに入れて保管できるようにしています。 さらに普段私たちが何げなく目にしている製品の表記の部分にもメッセージが隠されています。 原材料はABS樹脂です。 そしてこの製品の内容量(重量)は40gです。 エネルギーと書かれているのは食べたとき得られるカロリーではなく、燃やした時のカロリーを表記しています。 つまりこの製品は捨てて燃やすとおおよそ344kcal分環境に負荷を与えてしまいます。だから、すぐに捨てず

チョコレートができるまで

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 デザイナーからチョコレート型の1回目の3Dモデルが届きました。 その時の感想は「楽しい、ワクワクする形状」でした。 しかし、最初のモデルでこの製品が出来上がったわけではありません。 結論からお伝えすると販売されている最終形状になるまでに実に24回もモデル修正を繰り返していました。 最初に渋谷ヒカリエで構想を考えてから製品ができるまで、10か月を要し、製品形状が今の形になるまで様々な話し合いをしてきました。 ・本体の形状 ・色 ・表面のR表記をどのようにするか ・裏面をどのようにするか ・突き出しピンをどこに配置するか ・ゲートをどこに配置しどのように処理するか 製品形状を確定させて金型を起工する前に、立体で現物を見ながら議論するため社内で樹脂の切削品を製作しました。 ABSの板材から切削加工でモックアップ作成 塗装前に色合わせ モックアップ品に塗装処理 色もチョコレートの色に近い色にするべく色を整え塗装していきました。 3Dモデルではなく実際の大きさを立体で見るとやはりイメージが湧きますね。 ある日、外出から帰ると私の机の上に塗装前と塗装後のチョコレートが置いてありました。 本物と比べるためにか、一緒にパッケージから少し出されたチョコレートが置いてありました。 やっぱり本物のチョコレートと見比べるのも大切だよなーと思ってよく見たらパッケージに入っているチョコレートもプラスチック製のモックアップ品でした。 すっかり騙されました・・・ 銀紙でチョコレートの形を浮きだたせて本物に近づけているあたり、いたずら心を感じました。 あーやられたーと思いながらも一人でにやにや笑っていたのを今でも覚えています。 悪ふざけしながらも楽しくものづくりができるのは良い仲間に恵まれていたからだと思います。 何度か試作していくうちにいよいよ金型を製作することになりました。 それと並行してパッケージも製作していきました。 「 捨てられないパッケージを目指して 」につづく

BRANCHと一緒に再スタート

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 Rサンプルはあれば便利で必要なものではあるものの、どうすれば大切に使ってもらえるか悩んでいました。 その時、渋谷ヒカリエで「BRANCHと町工場」と題して展示会を開催しミヨシも一緒に出展していました。 展示会開催中に一緒にブースに立っていたデザイナーに「チョコレートの形で12区画のRを作ると面白いのでは」と言い、その場でスケッチしてくれました。 そのことをきっかけに、そのデザイナーさんとBRANCHとミヨシとでチョコレートの形で立体サンプルを製作することにしました。 当時はチョコレートの形なら複雑ではないしそれほど難しくないかな。 と、甘く考えていました。 デザイナーと一緒にモノづくりをすることがとても大変でその代わりとても良いものができることをこのあと知ることになったのです。 「 チョコレートができるまで 」につづく

立体Rサンプルを作って配布

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 「立体で確認できる R サンプルを製作すれば設計者やデザイナーと認識のずれを減らせるはず」   そう考えた私はすぐに立体の R サンプルを製作しました。   ・ R のサンプルは一番使用頻度の多い R0.5 を中心値にして0 .1_0.2_0.3_0.4_0.5_1.0_1.5_2.0 の 8 種類が確認できる形状 ・机の中に入れても邪魔にならない名刺サイズ ・厚みも極力必要最低限にしつつ外角 R と根本 R が分かるサンプル ・ノベルティとして配るので会社のことを思い出してもらえるようロゴと電話番号を記載 ・持ち運びしやすいよう紐が通せる穴を設ける ・ヒケ(樹脂の収縮)が発生すると実際の大きさと異なるので肉厚 2.5mm 以上になる部分は裏側を肉抜き 立体Rサンプル表 立体Rサンプル裏 3Dモデルを作成した後、すぐに社内で金型製作に入りました。 出来上がった製品を見て、 R を立体確認するだけなら十分だなと感じました。   取引先のお客様のもとに足を運んだ際にこの R サンプルを渡して打ち合わせして、お客様にも「便利だね」と評価していただきました。 立体Rサンプル しかし、 R サンプルを渡したお客様から「なくしちゃったよ」という話を聞き、便利であっても大切にされないものを作るのでは、ごみを作っているのと同じであり私たちが目指す「捨てられないものづくり」と真逆であると気付きました。 Rサンプルを使う人に大切にしてもらえるようにしたいと考えました。 私たちはものを作る技術はありますが、使う人の気持ちに寄り添ったデザインを考えることは苦手でした。 その後もサンプルは配布し続けましたが製作した当初のようなポジティブな気持ちではなく、大切にされないのではないかというネガティブな気持ちを抱えていました。 「 BRANCHと一緒に再スタート 」につづく

Resiinaを作るきっかけ

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チョコレート型の立体サンプル「Resiina」は開発、製造を開始して今年でちょうど10年を迎えます。 そこでResiinaの製作時のお話を書いていきたいと思います。 今回は「なぜ立体サンプルが必要になったのか」についてのお話です。 この製品を作るきっかけは二つ問題を解決したいと思ったことでした。 ・出来上がりの製品の角のRやCがデザイナー、設計者が想像していたものと乖離があった ・加工コストを下げるためにRやCの大きさ変更を提案したが、提案先でイメージしきれず高コストな加工を行ったことがあった いずれも、良いものづくりをしたいと考えている設計者デザイナーと加工者にお互いにとって何とかしたい課題でした。 そもそも、図面や3Dモデルで形状確認はできているが 実際の大きさでRとCは正しく認識できているのか という事が気になりました。 PCで操作するCADで作成する図面や3Dモデルは拡大縮小が容易にできる モニター上では実物の大きさが把握しづらい 加工側の私たちは出来上がったものを目で見て、手で触って確認することができるため実際の大きさを把握できる機会があります。 しかし、設計者やデザイナーは現物を確認する機会が私たち加工者と比べて少ないことに気づきました。 そこで、お互いの認識を近づけるために 目で見て、手で触って確認ができる立体サンプルを作ることにしました 。 「 立体Rサンプルを作って配布 」につづく